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エルベ/ヴュルツ峠

Erbe -Passo delle/Würzjoch エルベ/ヴュルツ峠(2006/1987m)
 なんでこんなに峠の標高に差があるのでしょう。【●峠のDBへ

 昔の測量技術が幼かったころの高い海抜値を、山小屋のオヤジや、地元観光協会は100年以上も守ってきたのでしょうか。たくさんの客を呼びたいために。
ドロミテ:Odleオードレ・エリア】 [北村 峠一] .(Kitamura)      


 なかなかいい眺めです。右前方の山はPeitlerkofelパイトラーコーフェル(2874m)。あの残雪は、先週まで2週間ほどヨーロッパ全域を震え上がらせていた雨、アルプスでは大雪だった名残でしょう。このアルムのように見える緑の牧草地に、牛たちが放牧されるのも間もなくでしょう。

pass-erbe
【d58.jpg:前方にPeitlerkofelパイトラーコフェル(2874m)の山の眺めが素晴らしく見えてきた】

pass-erbe
【1b8.jpg:峠も、もうすぐ。右になだらかな緑の牧草地が広がる】

 峠に到着です。「Würzjoch」ヴュルツ(ドイツ語)は、コショウ(Peppering:英語)の意味。「Erbe」エルベ(イタリア語)は、芝生(grass)だとのこと、この付近はそんな牧草や薬草が広がっていたのでしょう。【●峠のDBへ

 ところで、地図に2006mとあった海抜が、ここの峠のカンバンでは1987mしかありません。「なーんだ、2000mを切っているんじゃ、ありがたみが無いよなー」こんな気持ちになったのは私だけでしょうか? 19mも低いのです。

pass-erbe
【d60.jpg:ここには、しっかりとした海抜標示のカンバンがある。だが2000m以下。なんと1987mしかない。左手=南東の遠方に見える山はFanes-Sennes-Prags/Fanes-Sennes-Braies自然公園の3000mクラスの山】

 もしかすると以前はもっと高かったものが、地形の改良などで平らにされてしまったのでしょうか? それともルートを変えたのでしょうか? 付近の地形を見たり、ハイキング用のカンバンを見たり、持参の地図を再確認したり・・・

 ハイキング用に描かれているカンバンには2006m、1/15万の地図も2006m、1/30万地図が2004m、そして峠の表札が1987m。
周囲は実になだらかな地形、あそこにある山小屋もせいぜい10mくらい高いだけ・・・なぜ19mも差が出来たのか理解できません。

pass-erbe 2006mの地図 2004mの地図
【d66.jpg:ハイキング用に描かれているPasso-delle-Erbeの標高は2006m。1/15万の地図=2006m。1/30万地図=2004m。最大19mも差がある】

pass-erbe
【208.jpg:周囲にトンネルもないし、あの山小屋だって数m高いだけ。なぜ19mも?】

●「ヨーロッパ・アルプスの峠」で、海抜の値に大きな差のある峠は

 過去に各種の地図や、現地のカンバンなどで記述されている標高の値で、その数値に大きな差のある峠を列記してみます。
<条件>ヨーロッパアルプスの峠、1500m以上、10mを越える差のある峠:
 (国It=イタリア,At=オーストリア:左=max/右=minの標高m・・海抜の差m)

 ・It/At現国境:Timmelajochテンメースヨッホ峠(2509/2474m)・・差35m
 ・It(旧At領):Passo di Gaviaガビア峠(2652/2618m)・・差34m
 ・It(旧At領):Sellaセッラ峠(2244/2213m)・・差31m
 ・It(旧At領):Furciaフルチア峠(1789/1759m)・・差30m
 ・It(旧At領):Erbe -Passo delle/Wurzjoch エルベ/ヴュルツ峠(2006/1987m)・・差19m
 ・It(旧At領):Rolleロッレ峠(1989/1970m)・・差19m)
 ・At:Hahntenn Joch峠(1903/1884m)・・差19m
 ・It(旧At領):Passo di Costalunga/Karerpass コスタルンガ峠(1756/1745m)・・差11m

 これを見ると誤差の大きな峠は、いずれもチロル地方(イタリアは南チロルのエリア)の峠です。フランスやスイスの峠は、誤差も少ないようです。
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●山の標高はどのように測定されるのでしょうか
 日本の場合、日本水準原点(東京湾の潮位の平均値を0mとし、東京都千代田区永田町1-1に24.4140mが決定)を基に全国配置の水準点・三角点の高さが決められている。
・測定は、複数の三角点から見たときの水平面からの角度と距離で標高を求める。
・水準測量法:2点間の高さの差を求めるために使われる測定方法で、微少な地殻変動の調査などに使われる精度の高い測定方法。(大きな山には、山の重みで重力が働き、水平面が曲がる・・など)
・人工衛星を活用し、緯度・経度、高さを測定できる全地球測位システム(GPS)を使い測定する。
 参考URL:http://www5e.biglobe.ne.jp/~yamamosa/tizu.html

 当然、イタリアやオーストリアでも、同じような測定方法を採用しているでしょう・・

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●測定の誤差と年代
 例えば富士山の標高は、測定年ごとに数値が変わっていますが、それを記述すると
・1997(平成9)年:水準測量結果に対する重力の補正:標高3776.224m
 <静岡大里村教授と測量会社日豊のグループが、水準測量路線に沿った重力補正で測量>
・1993(平成5)年:水準測量(大成建設)。標高3774.97m
・1962年=3775.63m
・1926年=3776.29m
・1887年=3772.65m
・1887年=3778m ・・110年前、誤差1.8m
・1885(明治18)年=白山岳での測定値。標高3753.4m・・112年前、誤差13m
 参考URL:http://www2.wbs.ne.jp/~t-long/fuzisan/fuzizatu/fuzisannohyoukou.htm

 ・・110年以上前で、誤差が13m発生しています。

●誤差がいつまでも続いた(続いている)原因は・・・こんなところに(推測含む)

 →チロル地方の110年ほど前(1885年頃)は、すべての峠がオーストリア帝国(ハプスブルク帝国)にあった時代です。そして第一次世界大戦で、これら峠を中心に大激戦が行われ、南チロルがイタリアに割譲された歴史があります。
<●第一次大戦と南チロル/トレンティノ戦線

第一次大戦のトレンチーノ戦線  イタリア・アルプスの戦線
  【左:第一次大戦のトレンチーノ戦線(ポカレット戦線も参考に)。右:イタリア・アルプスの戦線】

 →以降も、第二次世界大戦が済んだ後も、南チロル問題など大きな社会問題を抱えた場所がこの付近の状況です。

 →イタリアのハイキングなどの詳細地図には、残念ながら国で出す公式のものは無いようです。スイスやフランスのように、早くから国が公式の詳細地図の整備を進めていた国との差が、峠の高度差などに出ているのでしょう。

 →民間の地図会社が精度の高い数値を出しても、地元の観光協会や、山小屋のおやじ達にとっては、少しでも標高の高い値のほうがありがたいのに決まっています。国が測量し公式に地図として出すまでは、この混乱は続くのでしょう。

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  え!?もしかして・・・
 ここが第一次大戦の激戦地?・・・で陣地が、山が地雷で吹き飛ばされた??   まさか?
・・・何か情報があれば、教えてください。

pass-erbe
【234.jpg:峠を東に下りながら見る、遠方の山。Fanes-Sennes-Prags/Fanes-Sennes-Braies自然公園の3000mクラスの山】


 そろそろ午後4時、急いでここを下りましょう。St.Martinサン・マルチンへの道には教会や城砦や・・・遠くに見えている3000mクラスの山、多分明日はあの山を見る方向に行くんだろうな。でも今日の予定は、ちょっと反対方向にあるもうひとつのFurciaフルチア峠にも行かなければ・・・

 今晩La-Villaラ・ヴィラまで行って宿を確保すると、翌日が楽なんだけどなー


<Furciaフルチア峠へは、Badiaバディア渓谷を数km下って、さらに20数km・・・>
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