記事No | : 179 |
タイトル | : ジャッカルの日:ウィーン |
投稿日 | : 2001/06/25(Mon) 11:52:37 |
投稿者 | : * |
映画の中のウィーン--「ジャッカルの日」
投稿日 2001年6月21日(木)11時25分 投稿者 あんだんて [usrL065.starcat.ne.jp] 削除
「第三の男」や「会議は踊る」は、ウィーンという街そのものが主役といった映画
ですが、そうではなく、ほんの二三カット登場するだけで、その映画の重要なキーワード
となっていることも意外に多いものです。フレッド・ジンネマンの監督した
「ジャッカルの日」(6月17日NHK-BS2で放映)もそうしたものの一つでしょう。
1960年代、植民地アルジェリア独立を認めたフランス大統領ド・ゴールに対して、
独立に不満をもつOASの暗殺計画を題材にした、F.フォーサイスのサスペンス小説を
原作とした映画です。映画は冒頭のファーストシーン5分間で大体見る価値があるか
どうか分かると思いますが、この映画の5分間は緊迫感に充ちたすばらしいもの、
しかもこのサスペンス感は全篇2時間あまりゆるむことがありません。いままで何度か
見ているにもかかわらず、今度も最後まで一気に見てしまいました。この冒頭に続いて、
OASが腕利きの狙撃者ジャッカルを選ぶシーンがオーストリアで、シュテファン聖堂と
プラーターの観覧車をロング・ショットで望む場面が2カットだけ登場します。
時間にして数秒間。しかしここからすべてが始まるわけです。
「真昼の決闘」や「地上より永遠に」「ジュリア」など、とにかく自己の信念を貫く
ことに賭ける人物を描くことが多いジンネマンですが、ここでも暗殺のプロとして
冷酷に計画を進めるジャッカルと、計画を阻止しようとするパリ警察の刑事、立場と
性格の違いはありながら、ともにプロとして対決する二人を対比しながらよく描いて
います。映画の中の人物もプロなら、監督も一流のプロ。近頃こうした仕上がりの良い
映画が少なくなって、幼稚な素人写真やテレビゲーム程度のものが、映画として大きな
顔で広告されているのには、全くうんざりします。
それはともかく、ジンネマンはウィーン生まれ(1907-1997)。「ジュリア」でも
ヒロインが反ファシズム運動に目覚める場所をウィーン大学に設定していました。
「ジャッカルの日」のラスト、ジャッカルの遺体を埋めたあと、荒涼とした墓地を
刑事が向うへ立ち去っていくシーンは、「第三の男」のラストシーンを裏側から
見るような感じがありました。